2017.08.19

EXPERIMENT

中銀カプセルタワーの夢と影 昭和のサスティナブル建築の今

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新橋駅から歩いて5分、ビジネス街のど真ん中に位置する「中銀カプセルタワービル」。世界で初めて実用化されたカプセル建築だ。各部屋(カプセル)は4本のボルトのみで固定されており、技術的には着脱可能な作りになっている。住居をひとところに構えるという従来の発想ではなく、新陳代謝(メタボリズム)や循環(リサイクル)の発想を実現したサスティナブル建築の原型として挙げられる。
 

 
その見た目から観光施設やギャラリーと見間違えてしまいそうだが、現在も人が暮らすマンションだ。リノベーションしたり、セカンドハウスとして週末を過ごしたり、写真集などの撮影場所として利用するなど使い方も様々。
 
埼玉県立近代美術館の広場には、カプセルモデルが設置されており、外からではあるが内部の様子を見ることができる。必要最小限の空間にベッドとユニットバス、そして当時は最先端だったオーディオ機器や計算機が備え付けられている様は、幼い頃に漫画や映画でた宇宙船のようだ。
 

 

 

 
ビルの考案者である建築家の黒川紀章氏は、上述の埼玉県立近代美術館(1982年)や国立新美術館(2006年)をはじめ未来型建築と呼ばれる建造物に多く携わってきた。1960年に26歳の若さで建築の理論運動メタボリズムを結成し、その後は日本だけでなく世界各国で活動を続け、2007年に亡くなってからも彼の残した建築物や理論への支持は根強い。
 
黒川氏が生前提言してきた、新陳代謝(メタボリズム)や循環(リサイクル)、非線形(フラクタル)のコンセプトはいずれも「生命の原理」に集約する。中銀カプセルタワービルをはじめ、一見奇抜な外観の建築物も、生命の営みを再解釈した産物なのかもしれない。
 
そんな中銀カプセルタワーが今、岐路に立たされている。1972年に竣工されてから45年が経過したビルは、いたるところに亀裂が入り、漏水や耐震強度不足などの問題に悩まされている。
 

 

 

 
上記のようにリノベーションされて綺麗に管理されている部屋がある反面で、修復不可能な部屋も多い。アスベストが規制される以前に建てられたこともあり、周囲からは不安の声も上がる。6畳にはめ殺しのドアが1つとドアのみという部屋の構造は補修工事も難しい。建て直すとなると現在の消防法に合わせて行う必要があるため、今あるビルの外観とは大きく変わってしまう可能性もあるという。
 
半世紀近くも東京のオフィス街を見下ろし続けたカプセル群は、黒川氏の思い描いた世界へ時代が追いつくよりも先に朽ち果てようとしている。
 
国内外からその存亡が注目される中銀カプセルタワービル。一体どんな未来が待ち受けているのだろうか。
 
 
取材協力:中銀ビルディング株式会社
撮影協力:埼玉県立近代美術館
※カプセルモデル内部の一般公開は行なっておりません。

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