2018.02.10

PHILOSOPHY

映画『74歳のペリカンはパンを売る。』プロデューサー石原弘之さんにインタビュー

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食パンとロールパンの2種類のみを作る老舗「パンのペリカン」。浅草駅から徒歩5分のそのパン屋さんには毎朝開店前から行列ができる。創業74年のペリカンは時代が変わってもたくさんの人に愛され続けている。

 

今回は昨年11月に公開された、ペリカンのドキュメンタリー映画『74歳のペリカンはパンを売る。』のプロデューサー石原弘之(いしはらひろゆき)さんに、制作に至ったきっかけや、作品に込めた想いについてインタビュー。優しいパンの味から見えてくるものとは?

 

石原弘之さん

▲株式会社ポルトレ代表取締役
プロデューサー/映画監督

きっかけはたまたま見かけたテレビの特集

 

ーー早速ですが、『74歳のペリカンはパンを売る。』の制作を始めたきっかけは何でしょうか?

 

テレビ番組でたまたま10分くらいのペリカンさんの特集番組を見かけて興味を持ったことがきっかけです。食パンとロールパンの2種類だけを販売しているパン屋さんに行列ができている。つまり社会に求められているということですよね。今の社会に求められていることを映像で表現したいと考えていたので、だったらペリカンさんをドキュメンタリーにしたらいいのではないか、というすごくシンプルな動機ですよね。紐解いていけばドラマがあるのではないかと思いました。

 

ーー映画や映像のテーマは、今回のように日常生活の中から見つけることが多いのですか?

今の時代の状況を踏まえて、自分が何に興味を持っているのかということは考えています。変わりゆく時代の大きな流れと、自分が大切にしていきたい変わらない思いを掛け合わせる感じでしょうか。自分自身は小さな物語に魅力を感じます。

 

ーー制作する中で意識したことは何でしょうか。

 

そもそもペリカンさんが素敵で、とてもユニークなパン屋さんであるということを伝えたくて制作しているわけなので、そこは大切にしていました。「街のパン屋さんをじっくりのぞいて見たらそこに尊いものがありました」というコンセプトがきちんと伝わるように意識しました。

 

ーー制作にはクラウドファンディングも活用されていましたよね。

 

そうですね。クラウドファンディングを活用したことで、改めてペリカンさんのファンが多いということにも気付かされました。「ペリカンが映画になるんだ!」と喜んでくださった方や、「現在は海外に住んでいるけれど、ペリカンさんのパンをよく買っていました。」という方が支援してくださったり応援の声をたくさんいただきました。

 

 

振り返ってみて分かる映画づくりの大変さ

 

ーーファンが多いというのはクラウドファンディングにもぴったりですし、素敵ですよね。撮影中大変だったことは何でしょうか?

 

振り返ってみると、撮影が続く中で一喜一憂せずと言いますか、浮き沈みなく制作を続けることがまず大変だったのかなと思います。それから、劇場決めなど全てをゼロからやっているのでゴールが見えない中で制作を続けるということも手探りで大変だったように思うのですが、やっている時は必死だったので振り返ってみると大変だったな、といった感じです。ただ独り言は異様に多かったと思います(笑)。

 

いちばん大変だったのはやはり劇場を決めることでした。パンで例えるなら、家でパンを作ることはできても、それを店頭に並べるということは難しいですよね。今はカメラもありますし、iPhoneで映画をつくることもできる。でもそれを劇場で公開するというハードルは高くなっています。大きな興行は初めてだったのでそこをクリアするのには結構苦心しました。

 

ーー制作はもちろんその次の段階がまた難しいのですね。実際に撮影にはどのくらいの期間がかかったのでしょうか?

 

2016年の4月頃にペリカンさんの特集をテレビで見てから、5月にはペリカンさんに行って映画の企画の話をしました。それから撮影を始めて11月末から2017年の2月末までクラウドファンディングをしていました。劇場が決まったのが2017年の5月です。今ちょうど新潟、大阪、佐賀、大分、沖縄の5館で上映しています。

 

ーーさらに関東での上映も控えているということですが、映画を通して伝えたい想いは何でしょうか?

 

映画に出演している、ペリカンの四代目の渡辺陸(わたなべりく)さんがおっしゃっていた「美味しいものは人を一瞬で幸せにする」という言葉は本当にその通りだなと思っていて、子どもの頃、好きな給食だと3限目くらいからわくわくしていましたよね。人間の素直な感情というか、喜びをペリカンさんのパンを通して伝えられたらなと思います。
それから「働くって何だろう」といった、普段改まって考えることはないようなことに向き合うきっかけにして欲しいという想いもあります。

衣食住に光を当てる映画づくりを

 

ーー確かに日常生活の中で「頑張って働こう!」と思うことはあっても、仕事について深く考えることって少ないかもしれません。石原さんが映画を生業としようと決めたきっかけは何だったのでしょうか?

 

もともと自由研究のような、自分の興味があるものを掘り下げるということが好きでした。中学2年生の時に、学校の隣にあった老人介護施設に毎日通ってドキュメンタリー映画を自主制作したことがきっかけです。僕らの世代ってゆとり教育の第一世代で、「好きなことをやってみよう」ということで、僕は映画に興味があったから、じゃあ撮ってみようと。当時同級生にミュージシャンを目指していた子がいて、その子はギターを持って、僕はカメラを持ってその老人介護施設に通いましたね。

 

ーーとても楽しそうです。もともと映画が好きだったのですね。ちなみに好きな映画は何ですか?

 

好きな作品は色々ありますが、『秋刀魚の味』(1962年)、『うなぎ』(1997年)は結構好きです。

 

ーー美味しそうな映画が多いですね(笑)。石原さんが思うドキュメンタリー映画の魅力は何でしょうか。

 

扱っているものが現実であるという部分にはとても魅力を感じます。観る人にとっては日常に近いものだと思うんです。フィクションはフィクションで逆に日常と離れているところが魅力でもありますよね。ペリカンさんの映画だったら、「いつも行っているパン屋が映画になる、じゃあ観よう」とか、パン屋さんをやっている人が「ペリカンさんの秘密を知りたいから観てみよう」と日常生活と近いからこそ、間口も広いと思います。ドキュメンタリーをつくる魅力は、自分の意思と相手との関係性があれば、映画をつくることができるという点ではないでしょうか。フィクションとなると、ドキュメンタリーに比べてどうしてもコストの面で課題が出てくることは否めません。

 

ーーありがとうございます。最後にこれから挑戦していきたいこと、や撮影してみたいテーマを教えてください。

 

ドキュメンタリー映画制作をきちんと事業化して、たくさん作品を世に送り出していきたいですね。「ポルトレのつくるドキュメンタリーっていいよね」、「個性的だね」と言ってもらえるように、題材を選ぶときもそうですし、どのように伝えていくかという中身の部分についてもしっかり考えていきたいと思います。

 

「衣食住」については常に考えています。人や人の基本的な生活にフォーカスして光を当てていけるような作品をこれからもつくっていきたいです。

 

 

ペリカンさんという一軒のパン屋さんを通して、人の営みについて考えて欲しいと語る石原さん。74年間もの長い間、たくさんのお客さんの食の喜びを支えてきたペリカンは今日も明日もたくさんの人の笑顔をつくる。『74歳のペリカンはパンを売る。』は現在複数の映画館で上映中。2月10・11日には東京・ユジク阿佐ヶ谷にて2日間限定ロードショー。その後も横浜、埼玉と順次公開が続くので、ペリカンさんの魅力が気になる方は是非。詳細は下記の公式HPまで。

 

74歳のペリカンはパンを売る。

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