2018.05.11

INSIGHT

「体を洗う場」から「体験を楽しむ場」へ 銭湯文化をアップデートする“東京銭湯”

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「一般公衆浴場」、いわゆる昔ながらの「銭湯」の数は年々減少している。平成元年には12,000軒を超える銭湯が日本全国で営業されていたが、平成28年度のデータでは3900軒。建物の老朽化や、経営者の高齢化、若年層の銭湯離れなど銭湯を取り巻く課題は多く存在している。古くは平安時代に原型ができたともいわれている銭湯文化はこのまま消え去ってしまうのだろうか。

今回はそんな危機迫る銭湯業界の活性化を目指して2015年にスタートした気鋭のコミュニティ「東京銭湯」の取締役“番頭”の後藤大輔さんに、その活動内容や今後の銭湯の目指す形についてインタビュー。東京銭湯で実際に運営している埼玉県川口市の銭湯「喜楽湯(きらくゆ)」の写真と共にご紹介。
 

後藤大輔さん


▲「Tokyosento Inc.」取締役番頭。
「Tokyosento Inc.」の経営する銭湯『喜楽湯』のマネージャー、及び東京銭湯全体の会社運営を行う。

 
ーーまず、東京銭湯は具体的にどんな取り組みをするコミュニティなのでしょうか?
 
4年ほど前に銭湯が好きな若者が、銭湯の情報発信をはじめようと集まったのが始まりです。これまでも組合とか銭湯側からの情報発信というのはありましたが、利用者側からの情報発信はあまり多くなかったので、それをつくって若い人たちにどんどん銭湯に行ってもらおうと。運営しているwebメディア「東京銭湯」には、色々な銭湯のレポート記事や情報が紹介されています。活動のもう一つの軸は、実店舗経営です。実際に埼玉県川口市で「喜楽湯」を経営しています。
 

 

 
年々銭湯が減っている理由のひとつに、「若い人が銭湯にあまり行かないから」という問題があって、僕らと同世代の人たちに銭湯に行くきっかけになればという思いで活動をはじめました。
 
ーー後藤さんご自身も銭湯にはよく行かれるのですか?
 
基本的に家でお風呂に入らないので、ほぼ毎日銭湯に行ってます。僕の場合は定点型(※後述)でライフスタイルの一部として毎日同じ銭湯に通っています。銭湯好きの中でも、僕のようにひとつの銭湯に通う「定点型」と色々な銭湯を巡る「お遍路型」がいて、楽しみ方も様々ですね。僕の場合はもともと肌が弱くて、アトピーに悩んでいた時期もありました。その時に色々と調べていたら、お湯と水風呂を交互に入る「温冷浴」という入浴方法が出てきて、銭湯だったら水風呂があると気付いて通いはじめたんです。段々と肌の調子も良くなってきて通い続けています。
 
ーー健康方法を探していたら銭湯に行き着いたというのはとても興味深いです。メンバーにはどんな方がいるのでしょうか?
 
今は30〜50人くらいの方が、東京銭湯のメンバーとして活動しています。いちばん多いのはライターさんで、それぞれ好きな銭湯に行って取材記事を書いてもらったり、デザインやイラストが得意なメンバーには、喜楽湯ののれんや内装を描いてもらったりしました。喜楽湯で住み込みで番頭をしている2人の他、番頭アルバイトをしてくれる子や、喜楽湯の運営についてアドバイスをくれる方もいて、色々な人に関わってもらっています。
 

 

-住み込みで働く湊研雄(みなと・けんゆう)さん(上)と中橋悠祐(なかはし・ゆうすけ)さん(下)

 
ーー東京銭湯立ち上げのきっかけは何だったのでしょうか?
 
2011年3月11日の東日本大震災後に、改めて都会の地域コミュニティの希薄さに危機感を感じて、代表の日野を中心に何かできることはないかと考えたことは東京銭湯が始まる大きな経緯になっています。僕自身はは、銭湯のことを話せる仲間が増えてきてみんなで「サイトを立ち上げよう」、「実際に銭湯を経営してみよう」と色々なことに挑戦できることが楽しくて続けています。
 
ーー活動を続けて行く中で、ぶつかった壁や大変だったことはありますか?
 
それまで会社員として働いてきた中で、ビジネスを回していくことに対してそれなりに知見はあるつもりだったのですが、銭湯経営はこれまでのノウハウが通用しないことが多いです。東京銭湯全体のマネジメントに関しても、普通の会社とは違ってみなさんの「銭湯を応援したい」というモチベーションで回っている団体なので、その辺りは試行錯誤の日々です。
 
ーー会社員時代を振り返ってみて、今のお話もそうですが、「働き方」や「仕事観」の変化を感じることはありますか?
 
会社員時代は「働くこと=お金をもらうための活動」と捉えていたのですが、会社員時代から東京銭湯だけでなく色々なプロジェクトに友人と関わっていく中で、お金を稼いでいようがいまいがそういったプロジェクトに関わることも「仕事」と呼んでいいのではないかと考えるようになりました。「何かをしていること=全て仕事」でいいんじゃなかなって。だからこそ楽しくできたらいいなと思っています。
 

 

ーー改めて後藤さんの思う銭湯の魅力とは何でしょうか?
 
銭湯って無言でいながら人と繋がっていられる、すごく気軽なコミュニケーションを取ることができる場なんですよね。近所の銭湯に行った時に、僕がよく行くバーの常連さんとたまたま一緒になったんです。バーだと「今日はあまり人と話したい気分ではないな」という時でも話さないと気まずくなるじゃないですか。でも銭湯だったらお互い並んで無言で体を洗ってお湯に浸かるという時間を共有することがコミュニケーションになっているような気がするんです。「人と繋がることができる、でも押し付けがましくない。」そういったところは銭湯の大きな魅力のひとつだと思います。
 

 
各家庭に必ずといっていいほど風呂があるこの時代。銭湯は「体を洗う場所」から「普段とは違う体験を楽しむ場所」に変化していると話す後藤さん。銭湯の減少に待ったをかける東京銭湯のこれからの活躍に期待が高まる。
 
 
「東京銭湯 – TOKYO SENTO – 」

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