2018.08.03

PHILOSOPHY

遊廓専門書店「カストリ書房」の渡辺豪さんと考える①リアルな体験の場としての書店

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日本にかつて存在した遊廓や赤線(※1)に関する文献を扱う、日本唯一の遊廓専門書店「カストリ書房」は、当時日本最大の遊廓としてその名をとどろかせていた「吉原」に静かに佇んでいます。
 
そんな類のない書店の店主で遊廓家の渡辺豪(わたなべごう)さんに、インタビュー。前編では書店立ち上げの経緯や、書店の未来についてお話を伺いました。
 
後編はこちら
遊廓専門書店「カストリ書房」の渡辺豪さんと考える②AIが接客する風俗の未来
 

渡辺 豪


 
遊廓家。日本唯一の遊廓専門書店「カストリ書房」店主。
IT企業の会社員から、2014年頃に遊廓に関する本の出版を始め、2016年にカストリ書房をオープン。現在も活動の幅を広げている。
 
ーー元々は会社員として働いていたとのことですが、会社員を辞めてこちらのお店を始めたきっかけは何ですか?
 
「それまでの仕事が面白くなかったから辞めた」というのがいちばん素直な答えです(笑)
 
以前はIT業界でデジタルコンテンツの販売をしていました。僕が会社員として働いていた時代はちょうどガラケーからスマートフォンに移り変わるタイミングだったのですが、そのタイミングでどんどん人が入れ替わっていって、いつの間にか管理部門側になっていたんです。自分のキャリア設計を考えた時に、今していることを続けていくべきなのだろうか、ということをすごく考えていました。そこで会社を辞めて、これまでデジタルコンテンツの販売に携わってきたことを応用して、当時関心を持ち始めていた「遊廓」について何かやりたいと考えたのです。
 

リアルな体験の場としての書店

 
ーー現場だからできること、管理部門側だからできることは職種や会社によっても様々ですよね。会社を辞められてから開店までの経緯を教えてください。
 
このお店をオープンしたのは2016年の9月ですが、2014年の末には先にネット直販で出版業を始めていました。
 
今の書店の仕組みでは、基本的には取次を介して委託販売する形で書店に卸します。ただ遊廓というテーマは決してマス向けではない。たくさんの書店に卸して販売機会を増やすというよりは、ネットでターゲットを絞って確実に届けていく方がいいだろう、と私なりに考えてネット直販という手段を選択しました。
 

 
次の展開を考え始めた時に、集客の手段としてイベントに目をつけました。今の私たちは1分、2分の例えばトイレに入っているような隙間時間でもスマホで検索したり、ゲームをしたり、細切れになった時間も情報収集に使うようになりました。そういった中で1時間、2時間ただ本を読むという行為は昔に比べて間違いなく辛くなっているはずです。さらに他のエンターテイメントが増えたことによって「読書」が相対的に人を惹きつけなくなっているということも事実。そういった現状を踏まえて、リアルの場での体験型コンテンツというものに注目が集まっていると考えたんです。
 

 
最初はトークイベントなどに招いていただいて話すという形が多かったのですが、自分でイベントを主催したいと思いはじめて、書店を作ることを決めました。また、もともとネット販売と同時並行で一部の書店には直販で本を卸していましたが、販路も自分で作ってしまいたいという思いもありました。
 

場所探しが最初の難関

 
ーーイベントを開催したいという思いが先にあったのですね。店舗のオープンに向けていちばん大変だったのはどのフェーズですか?
 
場所探しですね。「吉原でお店を出す」という気持ちには迷いはありませんでした。日本最大の遊廓だった吉原で、遊廓専門書店をやったら面白いだろうなと。ただこの辺りって全く商業施設の雰囲気がないですし、大きい商店街があるわけでもない。テナント募集しているような空き店舗もほぼありません。だから場所探しがいちばん苦労しましたね。空いていそうな物件を、近所の人に尋ねたりしながら一軒一軒当たっていきました。この辺りの空き物件って不動産屋さんでも紹介していないことが多いんです。
 
ーーもともとできあがっているコミュニティに入り込んでいくというのは大変なことも多いですよね。先ほどイベントのお話がありましたが、カストリ書房でイベントを開催する目的は何ですか?
 
座学だけではないリアルな体験の場を作りたいという思いが1つ目です。2つ目は、古書の販売に際しても利益が循環するような仕組みを作っていきたいということ。新刊は原則的には、著者や版元の利益は売れた数に応じるので、基本的に利益が循環する仕組みになっています。ただ古書についてはどんなに大手の古書販売店で売れようが、著者には1円も入りません。
 
特別な切り口を持っていた著者や出版社がいたからこそ、貴重な財産ともいえる本ができたわけで、その部分をきちんとリスペクトしたいという気持ちがありました。現在は販売されていない本であっても、その著者をお招きしてトークイベントに出演してもらうなど、古書においては新刊とは別の形で利益を循環する仕組みをつくっていきたいです。
 


 
ーーイベントの企画には著者や出版社が作る「文化」を大切したいという思いがあったのですね。渡辺さんが作る本について、電子書籍ではなく紙の本にした理由はありますか?
 
今、本は情報を得るものというよりはファングッズに近いものだと僕は思っています。音楽にしろ、ファンは実態のある「もの」が欲しいと思いますよね。電子書籍ではなく紙の本にしたのもそうした理由からです。ただ今は紙の方が優勢ですが、どこかで電子書籍と入れ替わるタイミングがあると思うので、その瞬間を見誤りたくはないですね。
 
※1赤線:昭和21年から売春防止法(昭和33年)が施行されるまでの間、営業が黙認されていた売春区域の俗称。
 
 
IT企業の会社員から、遊廓専門書店の店主として出版や販売に携わるようになった渡辺さん。後編では、遊廓に関心を持ったきっかけやこれからの性産業の未来についてお話しいただきました。ロボットが接客する風俗については、意外な回答を寄せていただきました。
 
後編はこちら
遊廓専門書店「カストリ書房」の渡辺豪さんと考える②AIが接客する風俗の未来
 
 
カストリ書房

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